猫の独り言

主人

眠い。昨日は夜遅くまで起きていて、今日は朝から用事があって遅くまで眠っていられなかった。休みは今日の残り7時間と明日の24時間。短い。

主人は眠い。これは別段、宇宙の法則に反することではない。夜更かしをして、朝から用事があって、しかも寝坊という人類古来の救済措置を封じられたのであるから、眠くなるのは算術より確かである。

ところが主人は、眠いと言った舌の根も乾かぬうちに、「休みは今日の残り七時間と明日の二十四時間、合計三十一時間」と勘定を始めた。ここが人間の妙なところである。猫ならば眠ければ丸くなるだけだが、人間は休息まで残高表示にして眺める。三十一時間もある、と考えれば相当なものなのに、「短い」と評する。時間というものは時計の上では同じ長さで進むはずだが、人間の頭へ入ると、月曜の午前は牛歩となり、休日の夕刻は脱兎となるらしい。

ことに休みの残量計算には、どこか悲壮なところがある。主人はまだ今日を終えてもいないのに、すでに明日の夜を見ている。土曜の夕方に座りながら、心だけは日曜の終焉へ先回りし、「もう休みがない」と嘆くのである。これは饅頭を手に持ちながら、その最後の一口を惜しんで空腹を感じているようなものだ。

人間は所有した瞬間から、失う計算を始める動物である。金を得れば減るのを恐れ、休日を得れば終わるのを恐れ、眠気を覚えれば寝たら時間が減ると惜しむ。かくして主人は、三十一時間の自由を前にして、すでに自由の葬式を始めている。吾輩はその脇で、時計という円い機械が、ずいぶん罪深いものに見えてきたのである。